産業としてのぽっちゃり求人

ぽっちゃり求人の主役は主婦たち

主婦がぽっちゃり求人のメインターゲット「ぽっちゃり社長」は30年前に、「ぽっちゃり性風俗店」を開業しようとして、マイコンが得意な男に「効率的に稼げるぽっちゃり女性」を「効率的に求人する方法」を考えるように依頼しました。100年余り前~経済都市江戸では、「ぽっちゃり女性」は経済的なステイタスとして求められました。そして、そのはるか昔から「ぽっちゃり女性」は存在していたのです。
では、その求人コミュニケーションを仲介しましょう、「ぽっちゃり」の解釈の相違による求人コミュニケーションエラーを解決しましょうと生み出されたのが、「婚姻マネジメント」を生業とする人物。つまりは「仲人」なのです。

前項で述べたように、第2次産業や第3次産業は発明でした。それは「サラリーマン」という、労働形態の発明です。それまでは、たとえば農家なら「土地」、職人なら「技術」に根ざしたものが「労働」であり、その対価である金銭はそれに付随したものでした。「土地」は、それこそ大震災や天変地異が起こらないかぎりは変わりません。「培った技術」も、それこそマイコンや3Dプリンタの発明などが起こらないかぎりは変わりません。「変わらない仕事」はどっしりと生活に根ざしており、金銭も多少の波はあったことでしょうが、大きく稼げることなど変わることはなかったのではないでしょうか。しかし、「サラリーマン」は異なります。「土地」にも「技術」にも根ざしておらず、彼らの仕事は彼らの生活に根ざすことなく、移ろいやすいふうわりとした仕事です。

ご存知のように、サラリーマンの求人には転勤があるため「土地」には根ざしません。特殊な「技術」があることは少なく、同業他社や他業同社に仕事が変わることは、何も珍しい特殊事情ではなくなったのです。土地や技術など、仕事が生活に根ざしていた時代は、女性を含め家族全員が仕事と向き合っていました。農業であれば「サンチャン」と呼ばれる、爺ちゃん婆ちゃん母ちゃんは労働の頭数に入っているのが一般的でした。技術に根ざした職人を生業とする過程においても、その技術は身近にあったでしょうから伝承は容易でしょう。簡単な作業から、それこそ嫁入りした妻であったり、幼い子供であったりしても学び、いわゆるアルバイトのような形で仕事と親しんでいく生活が、そこには自然にあったのです。つまり、サラリーマンの発明とは、職住が分割したことに他ならないのです。職と住まいが別れ、外に開かれたということは、セックスも開かれたということなのです。

つまり、サラリーマンの発明によって「求人」という概念が生まれました。男性の求人によって、男子は銃所を変えることになりますから、女性はそれについていく。男性は女性や子どもの分を含めて、それだけ高い給料を稼ぐ役割に特化していき、女性はそれを支える「主婦」という仕事に就くことになりました。これが「主婦」の発明です。「主婦」は職業ではありませんが、求人を介さなくても、男性がある程度稼げる高い経済性を持っていることを証明していました。なぜならば、「主婦」であることは、男性がそれだけ高い給料をもらっていることに繋がるからです。女性は「ぽっちゃり」であることが経済性を示すステイタスであったことと全く同じ文脈で、「主婦」であることでその経済性を示す指標になったのです。主婦になった女性たちは、異国の料理をこぞって覚え、被服を作り、ファッションやグルメ文化を支えました。その情報を提供する「主婦雑誌」たちは、その情報源として最新のものをこぞって提供したのです。

主婦たちは、ある程度料理やファッションを楽しんでいました。様々な情報を手に入れ、社会性を見出した主婦たちは、男女雇用機会均等法を生み出します。女性の多くは非正規雇用ではありましたが、アルバイトを始めるようになったのです。もしろん、アルバイトを始めた女性たちの仕事は、サラリーマンの仕事と同様に多様化していきました。もっと自己実現できる仕事や、もっと高収入の仕事へと。男性たちのニーズが先立ったのか、女性たちが高収入の仕事を求めたのか、はたまたそれは同時だったのか。おそらく、主婦やサラリーマンといった仕事が成熟したタイミングは同時だったのでしょう。女性たちにも、求人という仲人が現れるのも時間の問題でした。新しい刺激が発明される性風俗店においては、店舗型性風俗店は風営法によって新規開店が事実上不可能だったため、新風営法によって「デリバリーヘルス」が発明されました。店舗を持たないデリヘルは、会社を転職するサラリーマンと同様、新しい産業だったのです。そしてその主役がぽっちゃり求人なのです。